想妖匣-ソウヨウハコ-
「頂きました」
「んっ。あれ、私」
軽かった体にいきなり降り注ぐ重力。柔らかい物の上で寝ているようなか感覚で、秋は閉じていた目をゆっくりと開けた。体を起こし、周りを見回す。
周りは木製で統一された家具、白いソファーに本棚。夢から目を覚ました秋は、噂の小屋の中で小首をかしげる。
さっきまで見ていた光景は本当に夢だったのかと思うほどリアルだったため、秋は眉を顰め小屋の中をまじまじと見回す。すると、木製の椅子に腰かけ秋を見る明人の姿を確認できた。優しく微笑み、相手を安心させる表情。秋はそんな明人の表情に疑念は消え失せた。
「貴方の匣は開けました。さぁ、行きなさい。貴方を待っている人の元へ」
明人の言葉に反応するように、小屋のドアが開いた。
「来る事はもうないと思うけれど。まぁ、最初よりはいい顔つきになったんじゃないかい」
ドアを開けたのは、秋の夢の中で優しく問いかけ、正しい道へと導いたカクリだった。
カクリの言葉に従い、秋は立ち上がりドアを潜ろうと外に一歩、足を踏みだす。だが、その時大事なことを思い出し振り返った。
「あの、お代……」
「安心してください。貴方からはもう頂きました」
秋の疑問にすぐ答え、明人は立ち上がり彼女へと近付いて行く。両肩を触れるように掴み、回れ右をさせて背中をポンと促すように押す。
秋は押されるがまま外に出てしまい、振り向いた時にはもうドアが閉められていた。
「もう、頂いた?」
お代は記憶だと彼が言っていた事を思い出し、秋は顎に手を当て記憶を探る。だが、何も違和感を感じる箇所がないため、どこを奪われたのかわからない。
もしかして記憶をもらうという事自体が嘘だったのかと疑ってしまう。
「──今は、やる事をしないといけないね。早く麗の所に行かないと」
考えていても意味は無いと考えた秋は決意を露わにし、林の中を走り出した。
足取りは小屋に来た時と比べると軽く、清々しい表情になっている。林の外を見る瞳は真っすぐで、キラキラと輝いていた。
軽かった体にいきなり降り注ぐ重力。柔らかい物の上で寝ているようなか感覚で、秋は閉じていた目をゆっくりと開けた。体を起こし、周りを見回す。
周りは木製で統一された家具、白いソファーに本棚。夢から目を覚ました秋は、噂の小屋の中で小首をかしげる。
さっきまで見ていた光景は本当に夢だったのかと思うほどリアルだったため、秋は眉を顰め小屋の中をまじまじと見回す。すると、木製の椅子に腰かけ秋を見る明人の姿を確認できた。優しく微笑み、相手を安心させる表情。秋はそんな明人の表情に疑念は消え失せた。
「貴方の匣は開けました。さぁ、行きなさい。貴方を待っている人の元へ」
明人の言葉に反応するように、小屋のドアが開いた。
「来る事はもうないと思うけれど。まぁ、最初よりはいい顔つきになったんじゃないかい」
ドアを開けたのは、秋の夢の中で優しく問いかけ、正しい道へと導いたカクリだった。
カクリの言葉に従い、秋は立ち上がりドアを潜ろうと外に一歩、足を踏みだす。だが、その時大事なことを思い出し振り返った。
「あの、お代……」
「安心してください。貴方からはもう頂きました」
秋の疑問にすぐ答え、明人は立ち上がり彼女へと近付いて行く。両肩を触れるように掴み、回れ右をさせて背中をポンと促すように押す。
秋は押されるがまま外に出てしまい、振り向いた時にはもうドアが閉められていた。
「もう、頂いた?」
お代は記憶だと彼が言っていた事を思い出し、秋は顎に手を当て記憶を探る。だが、何も違和感を感じる箇所がないため、どこを奪われたのかわからない。
もしかして記憶をもらうという事自体が嘘だったのかと疑ってしまう。
「──今は、やる事をしないといけないね。早く麗の所に行かないと」
考えていても意味は無いと考えた秋は決意を露わにし、林の中を走り出した。
足取りは小屋に来た時と比べると軽く、清々しい表情になっている。林の外を見る瞳は真っすぐで、キラキラと輝いていた。