想妖匣-ソウヨウハコ-
いきなり現れた小屋は、もう何十年、何百年と建ち続けているのかと思うほど古臭く、人が住んでいるようには見えない。所々には蜘蛛の巣とかが張っているため、ここは廃家なのではと認識させる。
「ここじゃ、ないよね?」
「そうだと思うけど」
お互い顔を見合わせ、もう一度小屋に顔を向けた。
「中、確認してみる?」
「うん……」
恐怖で震えていた二人だが、それでも好奇心が勝り。震えながらも、小屋へと近付いた。
「開けるよ?」
「うん」
ドアノブを握り、李津は不安げに問いかけた。朱里は力強く頷き、決意を表すように李津はドアをバンッと、勢いよく開けた。
中は外装とは違い、すごく綺麗で温かみがある。
木製の家具で統一されており、本などが沢山あるが、それは全てを壁側に立ち並んでいる本棚にきちんと収まっていた。しかも、ただ入っているだけではなく、巻数も揃えられており、ジャンルまでも綺麗にまとめられている。
二人が中に入り周りを見回していると、奥にあるドアがいきなり開き、肩を震わせた。
「ご依頼ですか?」
ドアから出てきたのは、顔の右半分を前髪で隠してしまっている男性、筺鍵明人。
二人は明人から放たれる異様な雰囲気に立ち尽くし、端麗な顔立ちに頬を染めた。
「おや、大丈夫ですか?」
動かなくなってしまった二人に、明人は近付き優しく問いかけた。
その声にはっと我に返った二人は、明人との距離の近さに驚き、慌てて離れようと後ろに一歩下がろうとした。だが、焦りすぎて足がもつれてしまい、後ろへと転倒してしまう。
「いたた……」
「うぅ、いったい……」
「すいません、驚かしてしまいましたね」
転んでしまった二人を見て、明人は一人ずつに手を差し伸べる。
その振る舞い一つ一つが気品に溢れており、どこかの執事でもやっていたのではないかと思うほど美しかった。