想妖匣-ソウヨウハコ-
「では、お話をお聞かせ願いましょうか」
「お、お話?」
二人をソファーに促し、明人はソファーの前にある木製の椅子に座った。
朱里は彼の言葉を理解出来ておらず、李津も同じく分からないようで首を傾げていた。
「噂を聞きここまで来たんですよね? でしたら、なぜここに来る事にしたのかの経緯をお話していただけますか?」
明人の微笑みと纏っている異様な雰囲気で、二人はどうすればいいのかわからず口をつぐむ。
「え、えっと……」
何かを伝えようと口を開くが、目を泳がしてしまう。
話す事に躊躇している朱里に、明人は先を促すように言葉を重ねた。
「貴方がここに来れたのは、何かしらの理由があるからです。お悩みを抱えているのでしょう。口に出すだけでも楽になる時があります。さぁ、お話ください」
妖しい明人の笑みに二人は身体を震わせた。
朱里は顔を下げ考え込んでしまう。それと同時に手が白くなってしまうほど強く握り、下唇を噛む。
それから数秒後、朱里は覚悟を決めたようにパッと頭を上げ彼を見た。
「本当にお話──聞いていただけるんですよね? どんな話でも……」
「はい」
明人が笑みを消さずに頷いたため、朱里は安心したように今までの悩みを話し出した。