想妖匣-ソウヨウハコ-
「分かりました。簡単に言いますと、好きな相手が先輩といきなり仲良くなり不安になったと。真実を知りたいがその勇気がない。そういう事ですね」
「はい……」
「分かりました。そういう事でしたら私の力でもどうにか出来そうですね」
「本当ですか!!」
朱里は明人の言葉に体を乗り出し目を輝かせた。
李津も笑顔で朱里に声をかけるが、次の彼の言葉により、二人から笑顔が消えてしまう。
「ですが、結果がどうなるかは分かりませんよ」
「えっ……」
朱里は不安そうな表情に切り替わり、明人を見返す。
「貴方は今こう考えたでしょう。『これで先輩と一緒にいられる』と」
「えっ、ええ?」
明人の言葉に驚きを隠せず、自分の顔を手で触り確認していた。その様子を彼は、細長い手を口元あたりに持っていき、控えめに笑ったあと説明を続けた。
「顔にも少し出ていましたが、それだけではありませんよ。こういう仕事をしているのです。人の感情は少しなら読めます」
微笑みながら話す明人の漆黒の瞳は、全てを見透かし。人の闇までも見ているように感じ、知られたくない自身の感情までも握られているような感覚に陥ってしまう。
「話を戻しますね。貴方が思っているようになるかは分かりませんが、それでも"匣"を開けますか?」
朱里はその質問に答える事が出来ず戸惑っていた。その様子を李津は横目で確認し、片手を遠慮気味に上げ質問する。
「あの……、箱を開けるとはどういう事ですか?」
その質問に朱里はハッとなった。
今回二人は、噂が本当なのか確認するためだけに林の中へと足を踏み入れた。そのため、箱は持ってきていない。それに、なぜ明人は朱里達のお話を聞いたのかも謎だった。
「おや、お二人は意味をしっかりわかっていると思っていましたが、そうではなかったのですね」
少し目を開き驚く明人だったが、直ぐに普通に戻り、テーブルの下からペンと紙を取り出し何かを書き始めた。
「漢字の違いですね。意味も変わってきますが……」
書き終わり、明人はペンの蓋を閉め紙の横に置いた。そして、書いた紙を持ち上げ朱里達へと見せる。
紙には"箱"と"匣"の二文字が書いてある。どちらも"ハコ"と読める文字なため、朱里達は意味がわからず困惑の表情を浮かべた。
「こちらの"箱"は、物を大事にしまうもの。そして、こちらは蓋がしっかり閉まっており開かない事を指します」
「簡単な説明ですが……」と付け加え、紙とペンをテーブルの下へと戻す。
「さて。貴方達は少し勘違いをしていましたが、内容は変わらないですよね?」
確認の意を込めて、明人は目を細め問いかけた。
「あ、あの……。一体、何をするのですか?」
朱里が躊躇いがちに聞くと明人は笑顔を絶やさず、右の人差し指で朱里の胸元を指しながら言い放った。
「もちろん。貴方の心の中にある"匣”を開けるのです」
「はい……」
「分かりました。そういう事でしたら私の力でもどうにか出来そうですね」
「本当ですか!!」
朱里は明人の言葉に体を乗り出し目を輝かせた。
李津も笑顔で朱里に声をかけるが、次の彼の言葉により、二人から笑顔が消えてしまう。
「ですが、結果がどうなるかは分かりませんよ」
「えっ……」
朱里は不安そうな表情に切り替わり、明人を見返す。
「貴方は今こう考えたでしょう。『これで先輩と一緒にいられる』と」
「えっ、ええ?」
明人の言葉に驚きを隠せず、自分の顔を手で触り確認していた。その様子を彼は、細長い手を口元あたりに持っていき、控えめに笑ったあと説明を続けた。
「顔にも少し出ていましたが、それだけではありませんよ。こういう仕事をしているのです。人の感情は少しなら読めます」
微笑みながら話す明人の漆黒の瞳は、全てを見透かし。人の闇までも見ているように感じ、知られたくない自身の感情までも握られているような感覚に陥ってしまう。
「話を戻しますね。貴方が思っているようになるかは分かりませんが、それでも"匣"を開けますか?」
朱里はその質問に答える事が出来ず戸惑っていた。その様子を李津は横目で確認し、片手を遠慮気味に上げ質問する。
「あの……、箱を開けるとはどういう事ですか?」
その質問に朱里はハッとなった。
今回二人は、噂が本当なのか確認するためだけに林の中へと足を踏み入れた。そのため、箱は持ってきていない。それに、なぜ明人は朱里達のお話を聞いたのかも謎だった。
「おや、お二人は意味をしっかりわかっていると思っていましたが、そうではなかったのですね」
少し目を開き驚く明人だったが、直ぐに普通に戻り、テーブルの下からペンと紙を取り出し何かを書き始めた。
「漢字の違いですね。意味も変わってきますが……」
書き終わり、明人はペンの蓋を閉め紙の横に置いた。そして、書いた紙を持ち上げ朱里達へと見せる。
紙には"箱"と"匣"の二文字が書いてある。どちらも"ハコ"と読める文字なため、朱里達は意味がわからず困惑の表情を浮かべた。
「こちらの"箱"は、物を大事にしまうもの。そして、こちらは蓋がしっかり閉まっており開かない事を指します」
「簡単な説明ですが……」と付け加え、紙とペンをテーブルの下へと戻す。
「さて。貴方達は少し勘違いをしていましたが、内容は変わらないですよね?」
確認の意を込めて、明人は目を細め問いかけた。
「あ、あの……。一体、何をするのですか?」
朱里が躊躇いがちに聞くと明人は笑顔を絶やさず、右の人差し指で朱里の胸元を指しながら言い放った。
「もちろん。貴方の心の中にある"匣”を開けるのです」