想妖匣-ソウヨウハコ-
「風間君。さっき白井さんとちょっと揉めてしまって。だって、白井さん。私の事最低呼ばわりしたんですもん。ちょっと傷ついてしまいまして……」
「なっ!!」
江梨花は涙を堪えているような演技をしていた。それに対し、朱里は顔を赤くし怒りと悲しみの声を上げる。
何か言い返さないとと口を開けるが、気持ちばかりが先走り言葉を発する事が出来ない。
青夏は江梨花と朱里の様子を見て、するりと腕を解き考え込む。
腕をほどかれた事に江梨花は不貞腐れたが、その後は何もせず青夏の次の言葉を舞っていた。
「──白井。一体どういう事だ?」
その目は朱里を心配しているような、哀れんでいるような──そんな目をしていた。しかし、今の朱里は周りの人全てを疑ってしまっており。違う解釈をしてしまった。そのため、突然青夏を押し退け廊下を走り出す。
青夏はいきなり走り出した朱里を大声で呼ぶが、それを無視してそのまま学校の外へと走り去ってしまった。