俺が優しいと思うなよ?

週末の駅の朝は、平日より幾分静かだ。
キヨスクの前を行くまばらな人々を見ると、店のシャッターを上げる手が自然とゆっくりになる。朝の商品チェックをして新聞の朝刊と雑誌を並べていく。

「おはようさん」
「おはようございます」
常連のおじさんが新聞の代金をトレイに置いて朝刊を一部、慣れた手つきで丸めて脇の下に挟む。
「昼から雨が降るかもしれん」
「え、本当ですか。置き傘あったかな…」
と、呟きながらおじさんの後ろ姿を見送った。
日課のように毎朝はテレビで天気予報を見ているのに、今日はほとんど上の空だった。

──もう。響さんたちのことはお断りするって決めているのに。

そのはずなのに布団に入っても寝つきが悪く、朝から頭もぼんやりしていた。

そしておじさんの言うとおり、午後になると駅の外は傘の彩りが増えて構内も傘を手にする人が増えてきた。
今日の仕事は早出だったので勤務時間は午後一時までだ。そして遅出の従業員と交代する。
< 12 / 180 >

この作品をシェア

pagetop