俺が優しいと思うなよ?

「ご苦労さん」と、午後一時過ぎて店に顔を出したのは、交代する真木さんではなく上司の野上係長だった。
「野上係長、お疲れ様です」
「真木さんが少し遅れるそうだ。それまでのピンチヒッターだよ」
彼は苦笑しながら私と店番を代わる。
野上係長は五十代の男性で大柄で穏やかな雰囲気があり、社内で愛妻家として知られている。

私はいつも通りの引き継ぎを終わらせると、
「では、よろしくお願いします」
と、自分のカバンを持って店から出ようとした。

「ああ、そうだ」
野上係長は思い出したように口を開く。

「事務所の前でビックリするくらいの色男が立っていたよ。誰かを待っているようだが、もしかして三波さんの知り合い?」

色男と聞いて、背中がヒヤリとした。

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