俺が優しいと思うなよ?

でも。
「そんなの、成海さんは悪くないと思います。確かにチャペルのプレゼンはダメになりましたけど、あなたにはそれに勝る実績があるじゃないですか。一つ二つプレゼン落としたくらい、涼しい顔をしていればいいんです。私なんて「プレゼン落としたのはお前のせいだ」と罵倒されたことなんて、星の数ほどあるんですから!」

「……」
「……」
しまった。
今になって熱く物申してしまったことに、私は慌てて両手で口を塞いだ。

クスッ。

見上げれば、僅かに口角を上げて笑う成海さんと目が合う。
「?!」
その優しげな表情に、思わずドキリと心臓が波打つ。
成海さんが呟いた。
「お前って奴は…」
初めて聞いた柔らかな口調に、私の中の何かがほんのりと色づく気がした。

「このプレゼンにはいろいろあったからな。だから今回の都市開発にはリベンジ、というわけじゃないが成功させたいという気持ちが強い。そのために三波が必要だと思った」
本音が垣間見えるような話は、やんわりとした空気が一変してピリッと張った。

まだ何も出来ていない私は俯いた。
成海さんは「三波?」と呼ぶ。
ここは彼と私の二人きりだ。

聞くなら、今だ。
「成海さん」
顔を上げる勇気は、ない。

「私、ちゃんと聞いたことがありませんでしたが……成海さんは何故、私が必要だと思ったんですか」

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