俺が優しいと思うなよ?


翌日から、私は成海さんと教会のプレゼンに向け本腰を入れた。毎日のように現場へ行き、更地となった広大な土地がどんな街に出来上がるのかをいくつも想像して、教会の外観を少しずつ形にしていく。
「外構ですが全面芝生は手入れも大変だし雨の日の足場も悪くなります。公園側の一部を芝生にしてみたら……教会の回りは石畳を敷いてみることも考えましたが……」
「そうだな。階段も凹凸の少ない素材の煉瓦を使ってみるのもいいかもしれない。三波、参考になる物件を探してくれないか」
「分かりました」

スケッチブックに少しずつ足されていく点と線と文字。建築家成海柊吾の頭の中にあるものが外へと流れていく瞬間を私は立ち会っているのだと、緊張しながらもほんのちょっぴりの優越感を抱いて彼を見つめた。


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