俺が優しいと思うなよ?
──先輩って、二人は知り合い?
二人を交互に見ている私に、成海さんは「高校の後輩だ」と教えてくれた。
このお店は成海さんの後輩、工藤さんのご実家で四代目店長であるお父様の後を継がれたとか。
そのコックコートが似合う工藤さんが成海さんの席の隣に立ち、そっと耳打ちをした。
成海さんの眉がピクリと動いた。
「本当か?」
「間違いないです。俺があの人の顔を間違えるわけないでしょう」
そう聞こえた。
成海さんはナプキンでサッと口元を拭うと、財布からカードを出して工藤さんに渡す。
「三波、出るぞ」
食後のコーヒーもそこそこに、私たちは席を立った。
──なにか、あったのだろうか。
工藤さんがレジで精算をしてカードを成海さんへ渡す。
「行くぞ」
成海さんに言われて、私は急かされるように扉の外へ出ようとした。
その時。
「柊吾?」
と、女性の声に呼び止められた。
同時に、目の前の彼ら二人の動きが止まったように見えた。
レジの工藤さんは困ったように苦笑いを浮かべ、成海さんは眉間に皺を寄せて舌打ちでも聞こえてきそうな険しい顔をする。
その二人の後ろに、明るい茶色のナチュラルボブの髪にざっくりとした白いニットを着こなした、大きな瞳の綺麗な女性が立っていた。人目を引くくらいの、太陽のようなイメージの美人さんだ。