俺が優しいと思うなよ?

「パーティーならドレスが必要ね。もう用意したの?靴を買うならいいお店を知っているわよ。あ、もし良かったらパールのネックレスを貸してあげるわよ」
と、矢継ぎ早に話しかけてくることに、私は苦笑して体を一歩引く。
「ドレスや小物一式は、全て成海さんが用意してくれるそうなので」
「まあっ」
私の返事に、倉岸さんは興奮気味に「きゃー」と両手を口に当てて声を上げた。
「成海部長ったら……三波さんは、いっぱい愛されてるのね」
と言って、機嫌良く私の肩を軽くポンッと叩いた。

幼い頃から社交的なイベントは苦手だった。人前で挨拶をすることさえしどろもどろになって格好がつかないことだってあった。母がいればその度に「シャキッとしなさい」と注意され、人に囲まれて堂々としている妹の楓と比較された。
社会人になっても私は営業部を立てる建築デザイナーという裏方に徹していた。華やかな表舞台に顔を出すことはなかった。
だから、私はパーティーというものを別次元の空間のように思っていた。その上、世に名を馳せた成海柊吾の同伴となれば、例え仕事といえ悲しいほど釣り合わないという自覚が浮かぶ。

「……やっぱり断ろうかな」

成海柊吾が欲しいのは私の未だ役に立っていない才能だ。愛されてなどいない。デザインが完成しなければ、私は能無し呼ばわりされて会社を追い出されるだろう。
教会のデザインは現段階で外構部分が三種類のデザインが成海さんによって考えられている。本来ならそれに並行して私が教会のデザインを完成させないといけないのだ。

まったく教会のイメージが湧かない。
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