俺が優しいと思うなよ?
そうと決まれば、ヴェール橘の業務形態が3年前と変わらないなら担当となった社員は遅くまで残業を強いられる毎日を過ごすんだろうな、と経験したことだけあって同情してしまう。
そんなことを思っていると、横から成海さんの低い声が聞こえた。
「三波。あれからヴェール橘の西脇から連絡は来ていないだろうな?」
「西脇」というワードに体がピクリと反応する。
この質問は私を心配して言っているのか、それとも疑っているのか。この前は思いがけなく出会ってしまったが、どちらにしても3年前に無関係となった人物だ。
私は首を横に振った。
「ありません」
と答えた。
成海さんは「そうか」と言うと、車を降りた。