シンデレラは、ここにいます。〜オレの推しの推し〜

「あの、すみません
一緒に写真撮ってもらえませんか?」



駅の改札を出たらさっきと同じ言葉が聞こえた


振り向いたら憂だった



「なんだ、憂じゃん」



「おつかれー
謙士、今日も大活躍だったね!」



「憂、見に来てたんだ
ありがと」



駅から憂と一緒に帰った



「なんでさっき一緒に写真撮らなかったの?」



「オマエ、それも見てたの?」



「うん、見てた
撮ってあげればよかったのに…
勇気出して声掛けたと思うよ」



「だって、知らない人じゃん」



「うん、謙士は知らないかもしれないけど
そんな謙士を
一生懸命応援してくれてるんだよ

ファンサ悪いとモテないよ」



「そーだけど…
ファンサって、なに?」



「ファンサービス」



「なにそれ…
知らないけど
別にモテなくてもいいし!」



憂だけにモテたい



「でも、ちょっと嬉しかった?」



「いや、別に…」



「ウソ〜…嬉しかったくせに〜
ふたりとも可愛かったし…」



「別に可愛くても
どーなる事でもないし…」



「わかんないよ
付き合ったりして…」



え?

オレと約束したよな?


野球引退したら

オレ憂と付き合うって




忘れてないよね?



「憂とじょーくんもなんもなかっただろ」



「うん…」



「そんなもんだよ」



「そっか…」



そーだよ

なんもねーよ


憂以外とは

何もなくていい



「握手はしてたね!」



それも見てた?



「アレは…急に手出されたら
人間の心理として握ってしまうだろ」



「めっちゃ嬉しかったと思うよ!」



「なに?
じょーくんのファンだったから
気持ちわかんの?
憂もじょーくんと握手したいわけ?」



「うん…そーだね…
握手できたら
一生手洗わないとかみんな言うよね
さっきの子も今頃言ってるかもね」



「オレには気持ちがわからない」



「うん、私も洗うと思うけどね」



憂が笑った



「じゃあ、私も…
握手してください!」



憂がオレの前に手を出した



「え…」



一瞬、躊躇った



「アレ?
人間の心理として、握ってくれないの?
私も謙士のファンなんだけど…」



「え、あー…」



一応ファンだった

や、しっかりファンだった

たぶんファン1号



憂の手を握った



小さくて華奢な手



憂が微笑んだ



ドキン…



さっきの握手とは違う感情



さっきの子と握手した時は

何も感じなかったのに…



ドキドキする



「ん?」



憂が首を傾げた



ドキン…



かわいくて

手が離せなかった



できればこのまま

手を繋いで家に帰れたらな…



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