シンデレラは、ここにいます。〜オレの推しの推し〜

ん?

腕も赤くね?



憂の白い腕が赤くなってた



「憂、腕どーした?
赤い…」



掴んだ憂の華奢な腕



いつも掴んでるバットと違って

細くて柔らかかった



少し汗ばんでて

ドキドキした



「なんでもないよ!」



掴んだ手を払われた



赤い頬

恥ずかしそうに目をそらした



そんな顔すんな!



ドキン…



「ごめん…
腕、痛かった?」



「んーん…大丈夫
謙士は?手マメできてる?
痛くない?」



「あー…うん…
いつものことだし…
前に憂、テーピングしてくれたよね」



「あー…そぉそぉ…
6年生の時でしょ
私、テーピングなんてしたことないのに
謙士にテーピング頼まれて
下手くそ!って言われた」



「オレ、そんなこと言ったっけ?」



「うん、言ったよ
でも、だんだん上手になったよね!」



「うん」



「練習したんだ、私」



「練習?テーピングの?」



「うん
謙士のために練習した」



オレのために?


憂はだんだんテーピングが上手くなったのに…



「なのに謙士、野球やめたし!」



オレは憂にフラれて野球をやめた



「だよね…ごめん

あ、それからさ
憂、大会前に
頑張ってのハグしてくれたよね?」



「あー!そーだったね!」



謙士、頑張れ!って

小さな体でギューってしてくれた



それでオレ

頑張った



憂がいたから

頑張れた



野球頑張ったのも

野球やめたのも

憂が好きだったから



「憂…
また頑張ってのハグして…」



「え…」



「なんて…無理か…」



無理だろ



言ったあと

大きくなったオレたちに気付いて焦った



あの時とは違う



「後ろからなら、いいよ…」



「え…?」



「謙士、後ろ向いてよ」



「え、後ろって…」



「もぉ!こぉ!」



憂に身体を回された



憂が見えなくなって

細くて華奢な腕が後ろからオレに巻き付いた



「なんか、久々で恥ずかしい…」



憂の声が背中に響いた



ドキン…



あの時は

憂と大きさそんな変わらなかったのに…



ドキドキ…

ドキドキ…



「謙士、頑張れ!

次も勝ってよ!

絶対、勝つよ…」



シャツ越しに

憂の体温を感じた



ドキドキ…

ドキドキ…



「うん…ありがと…
次も頑張るよ」



「謙士って、こんな大きかったっけ?」



やっぱりあの時とは違う



ドキドキ…

ドキドキ…



「あ、オレ汗臭いかも…」



急に恥ずかしくなって

憂から離れようとした



ドキドキ…

ドキドキ…



「野球してる謙士の匂い好き
頑張ってる人の匂い」



憂の腕に力が入った



ドキドキ…

ドキドキ…



「なに?それ…
野球してるのとしてないの
匂い違うのかよ」



「違うよ
私だけがわかるの!」



ドキドキ…

ドキドキ…



秋の風が肩を抜けた



憂が触れてる部分だけ

熱い



ドキドキ…

ドキドキ…



憂、ハグ長くね?



「日が落ちたら、涼しいね
憂、寒くない?」



「うん…」



「憂、ありがと
もぉ…」



もぉ…

ドキドキする







どんな顔してる?



オレ

たぶん

顔ヤバイわ



めっちゃ顔熱い



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