エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
それまで俺の胸に顔をくっつけてウトウトしていた叶未が、目を瞬かせて真剣に悩み始める。俺はそんな彼女の髪を優しく撫でながら、語り始める。
「俺にとっての叶未は、ピジョン・ブラッドだよ。俺の心を真っ赤に染め上げる、情熱的な色のルビー」
決してお世辞じゃなく、心からそう思う。ウサギでもサキュバスでもない、ありのままの叶未が、俺の胸を熱く滾らせるんだ。狂おしいほどに。
叶未は盛大に照れて頬を赤くし、それを隠すように俺の胸に顔を擦り付ける。その仕草をかわいいなと思っていると、ぴたりと動きを止めた彼女が呟く。
「大和さんは……ダイヤモンド、です」
「ダイヤ?」
「他の、どんな人も絶対に勝てない、宝石の王様。特別な輝きを持った人です」
言い終えると、叶未はまっすぐな視線で俺を射る。じわじわと胸に広がるのは、甘やかな喜びと、叶未への強烈な愛おしさ。
「ありがとう」
俺は改めて彼女をしっかりと抱きしめ、この上ない幸福に浸る。
好きな相手に、自分の存在がダイヤモンドだと言われて有頂天にならない人間がいるだろうか。最上級の愛の告白を受け取った気分だ。
これからどんなに時が流れても、ふたりの間にどんな障害があっても。叶未にとっての自分が、いつでもダイヤモンドの輝きを保っていられますように。そう願わずにいられなかった。