エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
イミテーション*決心
ハロウィンパーティーを終えた後、仮装した衣装から私服に着替えようと更衣室に戻った私は、そこで着替えをしていた女性社員たち数人から、あまり好意的でない視線が送られているのを感じた。
もしかして、大和さんとのことがバレてしまったのだろうか。衣装が同じ動物だったから?
途端に居たたまれなくなり、早く着替えて帰ろうと、ロッカーのドアに手を掛ける。
「痛っ……」
瞬間、指先にチクッと鋭い痛みが走り、咄嗟に手を引っ込める。痛めた指先を見ると、針が刺さったような赤黒い傷がぽつんとできていた。
どうして? 怪訝に思いながらロッカーの取っ手を確認すると、ちょうど手が触れる内側に、テープで画びょうが固定されていた。
ぞっとして思わず周囲を確認するが、さっきまで私をじろじろ見ていたはずの女性社員たちは、まるで私の存在などないかのように、自分たちの着替えに専念している。
その無関心さが、逆に彼女たちの悪意を示しているような気がした。