エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

『大和があなたを結婚相手に選んだのは、おそらく紅蘭とは真逆のタイプだからでしょうね。もう、女性に裏切られるのはごめんだと。しかし、裏を返せばまだ紅蘭のことが吹っ切れていないとも言える』

『昔からふたりを見てきた友人として、思うんです。あなたのように優しく甘やかしてくれるタイプより、紅蘭のような刺激的な人物が大和のそばに居た方が、彼の成長、ひいては会社の発展に繋がるのではないかと』

『とはいえ、恋愛感情は理屈で割り切れるものではないので、無理に別れろと言っているわけじゃないんですよ。ただ、あなたの上司として、そして大和の友人として、あなた方の結婚に心からの賛同はしかねる……それが正直な気持ちなので、お伝えしておきたくて』

 大和さんをずっとそばでみてきた彼の言葉は、私の胸に重くのしかかった。加えて、さっきのロッカーの一件だ。

 私は大和さんが好きで、その気持ちに彼も応えてくれて。奇跡みたいな幸せに舞い上がっていたけれど、そのことで私は紫倉さんを心配させ、大和さんに憧れる女性社員たちを嫌な気持ちにさせている。

 もし紅蘭さんがまだ大和さんを想っているとしたら、彼女のことだって傷つけている。

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