エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
私さえ身を引けば、全部丸く収まる……? その選択肢を思い浮かべただけで、胸がギュッと締め付けられて、目の奥が熱くなる。
帰宅後、そんな私の葛藤など知る由もない大和さんに抱かれると、切ない思いはますます強くなった。
今だけは、何も考えず大和さんの愛情を精一杯受け取りたい――。
そう思って、彼に与えられる快楽に集中していたはずなのに、指先の絆創膏に彼が気づいた瞬間、呆気なく心細さが舞い戻った。
「ささくれが剥けてしまって」
でも、大和さんには知られたくない。彼には、私たちの結婚が誰かを不幸にしているなんて、思ってほしくない。身を引くなら、なにか別の理由を考えないとダメだ。
……って、なんで私、すでに身を引くこと前提の思考なんだろう。
ネガティブな思考を振り払い、彼と抱き合うことに集中する。大和さんは時々私の肌を強く吸い、赤い痣を残した。その独占欲がうれしくて、それ以上に切なかった。
私はこの人から離れなければならない。それはもう私の中で、決定事項になりつつあった。
私が我慢をすればいい。今までもずっとそうして生きてきたじゃない。