エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
「お気に召していただけてよかったです」
「きっと、叶未ちゃんが淹れたからなんだろうな。なんか優しい味がするもん」
紅蘭さんはニコニコしてそう褒めてくれるけれど、私の胸は卑屈な思いでいっぱいだった。
私には、丁寧にお茶を淹れるくらいしか取り柄がないのだと、思い知らされたような気がしたのだ。
過去に間違いを犯したとはいえ、ゼロからなにかを生み出す才能を持つ紅蘭さんはやっぱりすごい。ジュエリー久宝を背負って立つ大和さんの隣にいるのは、彼女のような女性が相応しいのではないだろうか。
大和さんは私をピジョン・ブラッドだなんて素敵な宝石に例えてくれたけれど、そんなふうに輝いているのは、紅蘭さんの方だ。私の輝きは、しょせんイミテーションの石程度。
常にキラキラ輝いて、たくさんの人を魅了するダイヤモンドのような大和さんの隣に立つには、あまりに分不相応だ。
「叶未ちゃん、私ね」
弱気になって俯いている私に、紅蘭さんが改まったように話し出す。
「今回のコンペ、通っても通らなくても……大和に告白しようと思うんだ」