エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
そのデザインは、紅蘭さんのものではなかった。
「紅蘭のデザインもいいところまではいったが……少しコストがかかりすぎるのと、個人的な思いをデザインに反映させすぎているので、落選だ」
大和さんはそう告げ、応接ソファの私の隣に座って向かい側の紅蘭さんを見つめる。紅蘭さんは悔しそうに、けれどどこか晴れやかな様子で微笑むと、小さくため息をついた。
「なんだ、バレてたんだ。昔、大和と一緒にオリジナルのジュエリーを作るの、すごく楽しかったからさ。その時に欠かせなかったツールのドリルと、〝一途な愛〟を意味するパパラチアサファイヤを使ったの」
紅蘭さんはそう言った後で、ちらりと私を見た。
……今ここで、大和さんに告白するつもりなのだ。そう悟った私は、紅蘭さんに向けて小さく頷き、立ち上がる。
「では、私は先に戻りますので」
大和さんの視線を感じたけれど、彼の方は見ずに応接室を出る。そしてドアに背中を預け、浮かんできた涙をごまかすように、上を向いた。