エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

 午後三時。会議の参加者が全員揃い、資料や飲み物の過不足がないか、空調の温度は適度であるかなど確認をしているうちにさっそく会議は始まっていた。

「国内では、まだ合成ダイヤモンド市場の動きは鈍い。私は、研究所の設立は反対です」
「私も反対です。日本の消費者は価格より品質を重要視する傾向にありますから、合成ダイヤモンドが一般的に普及するようになるにはまだ時間がかかるかと」

 開始早々、社長にとっては逆風の吹く展開だった。

 役員と議事録担当の紫倉さん、各部署の管理者十数名が集まっているが、合成ダイヤモンドの研究所設立に賛同している参加者はあまり多くないようだ。

 会議の行方が気になったけれど、私は社長不在の間、電話やメールの対応があるため長居はできない。会議の邪魔にならないよう、できるだけ音を立てずに会議室を出た。

 社長室に戻る前に、自分用にコーヒーを淹れようと給湯室に向かった。先ほど会議のためのお茶を淹れたのもそこで、小さなキッチンや冷蔵庫、電子レンジが置かれている。

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