エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

「おめでとうございます! 会議が始まった当初は雲行きが怪しかったので、心配していたんです」
「観月の資料がよかった。世代別の合成ダイヤモンドの認知度は、今後ジュエリー久宝の消費者の中心となるミレニアル世代が最も高い。そのことをわかりやすくグラフ化したデータと、彼らの世代が環境保全や地域社会への配慮を重んじる、エシカル志向であるというテキスト。それが反対派の心を動かした」

 社長はいかにも私の手柄だという風に言ってくれるが、その資料を作れと命じたのは彼だ。褒められるほどの仕事はしていない。

「私は、社長の指示通りに資料を作成しただけですので」
「いや、それ以上の仕事だよ。俺はあんな見やすいグラフ作れないし、人の心を動かす文章も書けない。……ところで」

 不意に、ぎしりと音を立てて椅子から立ち上がった社長が、私のデスクに歩み寄ってくる。

 目の前まできたところで腕を組み、高いところから私を見下ろすと、どこか不満気に口を開いた。

「やっぱり、なにかあっただろ」
「えっ?」

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