エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
十月に入ったとあって、表参道に並ぶ店のディスプレイはどこもハロウィン一色だった。
ジュエリー久宝でも、三十一日のハロウィン当日には社内全体で行う大規模な仮装パーティーが企画されている。
私も衣装を早めに用意しておかないといけないけれど、今日は気分が乗らないので買い物はパスしてまっすぐ地下鉄の駅に向かった。
自宅は渋谷にあり、駅から徒歩七分とまあまあ駅近の物件だ。間取りはメゾネットタイプの2LDK。そこで三つ年上の姉・芽衣とふたりで暮らしている。
ほぼ定時に上がって寄り道せずに帰ったので帰宅は私の方が先だと思ったけれど、玄関のドアを開けるとすでに姉の靴が置いてあった。
「ただいま~」
「おかえり。叶未も早かったんだ」
一階のLDKを覗くと、姉も帰ってきたばかりのようで、キッチンで手を洗っていた。
父親似でのっぺりした顔の私とは対照的に、母親似の姉は妹の私から見てもハッとするほどの美人。
髪形も、ストレートの黒髪を芸のないポニーテールかハーフアップにするしか能がない私と違って、ふんわり巻いたセミロングの髪を三つ編みにして後頭部にまとめた、上品なギブソンタック。
おくれ毛の垂れたうなじが色っぽく、姉妹なのにこうも違うものかとため息をつきたくなりながら、私も姉に続いて手を洗う。