エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

「どうしようかご飯。早い時間にふたり揃ってるから、外食でもする?」
「うーん……ちょっと外に出る気分じゃないかな。私、なにか作るよ」

 そう答えてタオルで手を拭き、冷蔵庫を覗く。

「牛の薄切り肉があるね。牛丼とかでいい?」

 尋ねながら今度は野菜室を空けて玉ねぎを探す私に、姉がぽつりと尋ねる。

「叶未、元気ないけどなにかあった?」

 ……やっぱり、突っ込まれるよね。

 私は一旦野菜室を閉めると力なく微笑んで、こくんと頷いた。

 社長の前では強がったけれど、姉には嘘はつけない。それは家族だからというだけでなく、姉の職業が、心の専門家である臨床心理士だからだ。

 姉はその資格を生かし、都内の高校で常勤のスクールカウンセラーをしている。

「仕事? 恋愛?」

 姉は端的に聞きながら、冷蔵庫から缶チューハイを二本取り出して一本私に渡す。

 そのさりげない優しさに感謝しつつ、私はプルタブを開けてひと口お酒を飲む。そしてぷはっと息をつくと、正直に答えた。

「両方」

 姉はふっと苦笑し、お酒の缶を手に突っ立ったままの私に代わって牛肉と玉ねぎを冷蔵庫から取り出した。

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