エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
脱いだスニーカーをロッカーにしまう手が止まった。
完全に私の話だ。半年前、総務課にいた私を社長が自分の秘書にと引き抜いて以来、秘書課の先輩方によく思われていないのは薄々察していたけれど、こうして実際に耳にするとつらいものがあるな……。
たしかに先輩方は、のっぺりした地味顔の私とは違い皆さん人目を引く美人。毎日ピンヒールのパンプスをカツカツ鳴らし、堂々と歩いている。
私も秘書になった当初は、そのカッコいい姿に憧れて、ヒールの高い尖ったパンプスを愛用していた。
でも、しばらくそれを続けていたらどうしても足が痛くなって、仕事のパフォーマンスも下がってしまった。
だから、社長に迷惑をかけないようにと最近は通勤時だけスニーカーにしているのだけど……ダメ、だったかな。
「いつも着けてるネックレスもなんなんだろうあれ? 透明感のない青い石の」
「安物のパワーストーンじゃない? 陰気臭いから、その石になにか叶わない願いでも掛けてるのよきっと。プリンスの彼女になりたいとか」
「あははっ、無理オブ無理~」