エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

 同時に、指に嵌めたブルーサファイヤのうっとり眺めながら『これは私の宝物』と自慢する母が羨ましく、幼心にも恋愛とジュエリーへの憧れを抱いた。

 ジュエリー久宝を就職先に志望したのも、その憧れが大人になるまでずっと胸の中で生き続けたからだ。

 しかし思えば、今でも色あせないジュエリーへの情熱に対して、恋愛の方はすっかり消極的になってしまった。

 誰かを好きになっても、その相手からジュエリーを贈ってもらえるような関係にまで発展させる勇気がなかった。

 今回の恋も、同じ道筋を辿るのだとばかり思っていたけれど――。

 ふと伸ばした指先で触れたのは、鎖骨のくぼみで輝くラピスラズリのネックレス。先輩たちにはばかにされたけれど、決して安価ではない上質な石で、社長秘書になった半年前に購入したものだ。

 吸い込まれるような濃紺のところどころにパイライトと呼ばれる金色の模様が散っていて、さながら星が瞬く夜空のよう。

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