エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
モルガナイト*深愛
月曜日の朝。私は社長に返事をすると意気込みすぎたのか、通勤中にパンプスのヒールを道の小さな段差に引っ掻けて転びそうになった。
幸い派手な転倒はしなかったものの、変な風に踏ん張った足首をひねってしまい、次第に患部がジンジンと痛みだす。
それでも会社のそばまでは来ていたので、痛む方の足をかばいつつなんとか歩いて、ビルの通用口から中に入った。
社長室に常備している救急箱の中に湿布がある。今日は外に出る用事はないし、社長に事情を説明して湿布を貼って仕事をさせてもらおう。それにしてもドジだな私……。
思わずため息をつき、エレベーターの前でボタンを押そうとしたその時だ。
「観月さん、どうされたんですか? その足」
背後から男性に呼びかけられ、私は振り向く。
「あ、紫倉さん。おはようございます。ちょっとひねってしまいまして……」
歩み寄ってきたのは今日もクールな雰囲気を漂わせている紫倉さんで、彼は私の足元を心配そうに見つめて言う。
「後ろから拝見していた歩き方から察するに、相当痛いんじゃないですか?」
「見ていたんですね、お恥ずかしい……。でも、大したことはないんです、ほら、この通りしっかり立てま……痛っ」