エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

「それで、さっそくだけど聞かせてもらえるかな。観月の出した答え」

 き、来たっ……! 心の準備はしていたはずなのに、一瞬にして緊張が走り手のひらに汗が滲んだ。静かに深呼吸をして、彼を見る。

「私、あなたと結婚します」

 迷いを断ち切り、ハッキリ告げた。言い切った後も、心臓の音がまだうるさい。

 社長はまったく驚いた様子もなく微笑み、スーツの内ポケットに手を入れた。

「よかった。これが無駄にならなくて」

 そう言って彼が取り出したのは、仕事で見慣れているラベンダー色の小箱。ふたにはアルファベットでジュエリー久宝のロゴが刻印されている。

 社長がゆっくりふたを開けると、煌めくサーモンピンクのジュエリーに金のフックが付いたピアスが現れた。

「社長、これは……?」
「契約が無事成立した記念のプレゼントだよ。この石、なんだかわかるか?」

 近年、ジュエリー業界ではダイヤモンドやルビー、エメラルドなどの貴石以外のカラーストーンの人気が高まり、ジュエリー久宝でも扱うようになった。

 私の着けているネックレス、ラピスラズリもそのひとつ。おそらく、このピアスのジュエリーもそうだろう。

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