エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

「この色合い、モルガナイトですか?」
「さすが観月。正解。じゃあ、モルガナイトの石に込められた意味は?」

 私は即座に、頭の中のジュエリー辞典をペラペラとめくる。

 ジュエリー久宝の社長秘書として知識が多いに越したことはないので、ジュエリーの勉強は日々欠かしていない。モルガナイトの持つ意味も、知っていたはず……。

「優美さ、優しさ、慈悲……などだったと思いますが」
「ああ。そこから発展して〝愛の本質を教えてくれる石〟とも言われている。これから俺を愛そうとしてくれるきみに、是非贈りたいと思ってね」
「愛の本質……」

 思いがけない素敵な贈り物に感極まってしまい、お礼を言うのも忘れてピアスの輝きに陶然と見惚れる。社長はそんな私の様子にクスッと笑みをこぼすと、箱のふたを閉じてしまった。

 顔を上げると、彼は少し不服そうにテーブルに頬杖をつき、私を見つめる。

「喜んでくれるのはうれしいが、ピアスにばかり気を取られてしまうなら本末転倒だな。プレゼントはやっぱり持って帰ろうか」
「えっ」

 つい、がっかりしたような声が漏れてしまい、そんな自分に恥ずかしくなって口元を手のひらで押さえる。はしたないところを見せてしまった……。

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