エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

 後悔しながら上目づかいで社長の表情を窺うと、彼はクスクスと悪戯っぽく笑っていた。

「冗談だよ。きみに似合うと思って真剣に選んだものだ。ぜひ着けて」
「……はい。ありがとうございます」

 私は今度こそきちんとお礼を言って、ピアスの箱を受け取った。間もなく飲み物とアミューズが運ばれてきて、コースが始まる。

 トリュフ、フォアグラ、オマール海老や鴨肉といったフレンチでは定番の食材に、松茸や銀杏、和梨といった日本人にとって馴染み深い秋の味覚を合わせた料理の数々はとても新鮮で美味だった。

 一品一品感動しながら食事を楽しみ、デザートのモンブランがテーブルに置かれた頃、私は気になっていた新居について社長に尋ねてみた。

 甘いものが好きな社長は、口に入れた濃厚なマロンクリームに幸せそうな吐息をついてから、答えてくれる。

「とりあえず、南青山の俺の自宅に来てくれればいい。部屋なら余っているし、会社から近いからきみも便利だろう」
「そんなに広いんですね、社長のご自宅って」
「ああ。ワンフロアにつき一住戸のマンションだからね。広さはだいたい百平米だったかな? 間取りは2LDKだ」

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