エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
賃貸にしても分譲にしても、南青山でその広さならとんでもない金額の物件だろう。
彼のセレブっぷりは十分理解していたつもりだが、改めてこの人は上流階級の人間なんだと実感する。
「では、同居している姉に相談して、引っ越し日を決めますね」
「できるだけ早くがいい。もちろん、入籍も」
「わかりました。ですがその前に、社長のご両親にきちんとご挨拶がしたいのですが」
お母様とは先日会ったものの、あの時は動揺して挨拶どころではなかった。お父様の方は海外にいることが多いけれど、大事なひとり息子の結婚となれば、さすがに帰国するだろう。
「観月のことなら、両親にはもともと素晴らしく有能な女性だと伝えてあるから、父には電話の一本でも入れておけば大丈夫だ。母もあの通りきみを気に入ってるから、時間が合う時に、三人で食事でもしよう。それより、俺の方こそきみのご両親にちゃんと挨拶しなければ」
社長は緊張したようにネクタイを正し、そう言ってくれる。
今まで浮いた話のひとつもなかった私がいきなりこんな素敵な人を紹介したら、ふたりとも驚くだろうな。