エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
これが、紅蘭さん……。大和さんと同い年でかつ彼の元交際相手なら、エレガントな雰囲気の女性だろうと想像していたけれど、まったく違うタイプだ。
「久しぶり、大和。……あれ? その子は?」
大和さんの後ろに立つ私に気づき、紅蘭さんが不思議そうな声をあげる。
「彼女は秘書であり、俺の妻でもある叶未だ。ちょうどいい機会だから、きみに紹介しようと思って連れてきたんだ」
「うっそ。妻……?」
目を丸くした紅蘭さんにジロジロと観察され、慌てて「はじめまして」と頭を下げる。
まさか大和さんがこんなにあっさり私を〝妻だ〟と紹介するとは思わず、うれしいような気まずいような、複雑な心境だ。
「ふうん。だから急に冷たくなったんだ」
「急にってなんだよ。そもそも長い間連絡を取ってなかっただろ」
話の行方を気にしつつ、紅蘭さんの向かい側の席に大和さんとともに移動し、腰を下ろす。
テーブルにはすでにかわいらしい松花堂弁当が置かれていて、従業員に飲み物を注文すると、紅蘭さんがしびれを切らしたように「いただきまーす」と両手を合わせた。