エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
「ちょっと、トイレで作戦会議しましょう、叶未ちゃん」
「えっ、あのっ」
「大和は来ないでね~。女同士の話だから」
紅蘭さんはわかりやすく安い挑発をして私を無理やり立たせると、スタスタと個室を出て座敷を下りる。
大和さんも口を挟む隙がなく、私は彼女に手を引かれるがままに、化粧室へ連行された。
ふたつの個室の手前に手洗い場がふたつ並んだ広めの空間で、紅蘭さんはさっそく口を開く。
「実はさ、私、昔大和と付き合ってたんだけど」
「……はい」
予想はしていた話だ。けれど、できることならその詳細は知りたくないというのが正直なところだった。もちろん、この場から逃げ出すなんてできないけれど……。
「当時、大和はいつも私にデザイナーの才能があるって言ってくれて、それに励まされたのと同時に、プレッシャーにもなってたんだよね。それで……コンテストに出す作品のアイデアが浮かばなくて困ってた時、つい、やっちゃった。いいなって思う他の学生の作品を模倣して、自分のものとして出したの」