エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
模倣――。デザイン関連の企業に勤めていれば、よく聞く言葉だ。
ジュエリー久宝でも、自社デザインの知的財産権を守るため、デザインを保護する意匠権、ブランド名を守る商標権などを取得している。
「それが、幸か不幸か賞を取っちゃってさ。なにも知らない大和は自分のことのように喜んでくれたんだけど、本当の作者はやっぱり気づくじゃない。これは自分のデザインをアレンジしたものだって」
自嘲するように、紅蘭さんが話す。過去を見つめるその目は、どことなく切ない色をしていた。
「その学生、男だったんだけど……口止めするために、私、好きでもないそいつと寝たんだよね。一度きりならまだしも、何度も。その時はもう口止めっていうより、そいつのデザインを参考にさせてもらうための使用料?って感じで……はは、自分で言っててクズだなって思うねこれ。結局大和にも全部バレて、振られちゃった」
紅蘭さんは明るく笑いかけてくるが、私は笑えない。大和さんがさっき〝自分の不実を棚に上げて〟と言っていたのは、このことだったんだ。