エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

「でもさ……やっぱ社会に出たら、そんなやり方通用しなくて。そいつとダラダラ関係を持ちつつ、いろんなジュエリーデザインのコンテストに応募したんだけど、どこにも引っ掛からないの」

 と、いうことは、今回応募してきたデザイン画もその男性と協力して? だとしたら大和さんが規約違反だと言うのも頷ける。

「もう、いい加減こんな自分が嫌で、男とは別れた。そしたらちょうど、大和の会社が新ブランドのジュエリーデザイナーを発掘するためのコンペをやるって知ったの。……大和がくれた最後のチャンスだって思った。だから、今回の作品だけは、正真正銘自分の実力で描いたものなの。大和はあんな形で自分を裏切った女を信じないだろうけど、もしも叶未ちゃんが私を信じてくれるなら、私のデザイン画をちゃんと見るように、大和を説得してみてほしい。お願い、この通り」

 切実な声音で言い終えると同時に、紅蘭さんは深々と私に頭を下げた。

 今までの印象とは打って変わって殊勝なその態度に、私の心は揺れ惑う。

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