エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
過去に模倣の前科がある彼女のデザインを採用するのは、ジュエリー久宝にとって当然ハイリスク。そう思う一方で、紅蘭さんが大和さんの元彼女だからって、お前はやっかんでいるんじゃないのか?と囁くもうひとりの自分もいる。
そうだとしたら、ジュエリー久宝の社長秘書失格だ。冷静にならないと。
紅蘭さんが過去に犯した過ちは絶対に間違っている。だけど、もしも彼女の言う通り、今は反省し心を入れ替えているなら……採用するかどうかは別として、正当な審査を受ける権利は、あるのではないだろうか。
「紅蘭さん、頭を上げてください」
そっと声を掛けると、紅蘭さんは縋るような目で私を見る。まるで彼女の方が年下だと錯覚しそうになるほど、頼りない視線だ。
「紅蘭さんの望み通りにはならないかもしれませんが、私なりに、社長に進言してみます」
「ホント? ありがとう叶未ちゃん!」
紅蘭さんは私の両手をギュッと掴み、歓喜の声をあげた。
知り合ったばかりの私に、過去の過ちをあんな風にさらけ出して、全力で頼ってくる。
なんて無邪気で正直な人だろうか。大和さんも、紅蘭さんのそんなところを好きになったのかな……。
ぼんやりそう思うのと同時に、ふと気がついた。