エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
大和さんはふっと嘲笑をこぼし、お弁当に箸を伸ばす。あまり追及されたくない話なのか、私と目を合わせてくれない。
「良くも悪くも、自分に正直な方だなって思いました。でも、だからこそ私、今回応募してきたデザインに関しては、紅蘭さん、ずるいことはしてないと思うんです」
煮物を咀嚼していた大和さんは口の動きを止め、ちらりと私を見る。
今回の件に関して、おそらく大和さんは私情を絡め、独断で彼女を規約違反としている。
だけど、彼女が本気で応募してきたデザインをきちんと見ないで弾いてしまうのは、ジュエリー久宝にとって本当に正しい判断なのだろうか。
「大和さんだけでなく、私や他部署の審査員でも厳正に彼女のデザインを評価して、それで落選ならそう伝えればいいと思います。でも、その土俵に上がる権利さえ奪うのは、いささか不公平ではないでしょうか」
大和さんを不快にさせるかもしれない。そう思いながらもひと思いに言い切ると、全身が熱くなった。
どうして私は、過去に大和さんを裏切った女性の味方をしているんだろう。もうひとりの冷めた自分がそう言っている気がしたが、秘書として間違ったことはしていないはず。
自分にそう言い聞かせ、ジッと彼の返事を待つ。