エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
それを発散するにはひとりになれる入浴時くらいしかチャンスがないので、私は体や髪を洗った後で湯船に顔を浸け、水中で「あぁーっ!」と思い切り声を出した。
苦しくなるまで声を吐き出すと、ざぱっとお湯から顔を出して息をつく。
うん……少し、スッキリしたかも。
お風呂から出て、いつものようにリビングで寛ぐ大和さんのもとへ向かうと、彼はテーブルの上でスタッキング式のジュエリーボックスを広げていた。
様々な宝石があしらわれた指輪やネックレスが保管されているほか、別の段には加工前の原石と思われる美しい石の数々が小さなルースケースに入って並んでいる。彼のコレクションだろうか。
「大和さん」
「ああ、上がったのか。ちょっと、隣に座って手を出してくれないか?」
「はい」
促されるがまま彼の隣に腰を下ろし、片方の手のひらを上に向けて差し出す。
「この石、どう思う?」
のせられたケースの中には、直径四センチほどの、淡いグリーンの宝石が入っている。手の平の角度を少し変えると、中の細かいインクルージョンがキラキラと星のように瞬いた。