エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

「きみが自分の中に閉じ込めてる不純物も見せて。俺たち夫婦の間で隠し事はしないって、契約書にもあっただろう?」
「え?」

 思わずどきりとした。私の心にモヤモヤと渦巻く嫉妬心に、気づかれてしまったのだろうか。

「きみは、紅蘭と会ってから様子がおかしい。それがわからないほど俺は鈍い男じゃないよ。それにさっき、うっぷんを晴らすように風呂で叫んでただろ」
「えっ、大和さん、なんでそれを……!」

 ガバッと彼から体をはがして顔を上げると、大和さんは少しばつが悪そうに言う。

「洗面所に腕時計を置きっぱなしにした気がして、きみに悪いと思いつつ一瞬だけ脱衣所に入ったんだ。そしたら、泡がぼこぼこ鳴る音と、微かに獣の咆哮のようなものが聞こえて」
「け、獣……」

 お湯の中だから聞こえないとばかり思っていたのに、扉の向こうに大和さんがいたなんて! 

「ほら、洗いざらい白状するんだ」

 小さな子にするように、ポンポンと私の頭を軽く叩く大和さん。その優しい触れ方に誘われるようにして、私は言葉を探しながら口を開く。

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