エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
近すぎる距離感にバクバク鳴る心音を全身で感じながら、頼りない声で問い返す。
「うん。叶未って、俺を不快にさせるんじゃないかとか、俺に嫌われるんじゃないかって心配しすぎて、いつも言いたいことの半分も言えてないだろう。しかし悪いけど、その程度で冷めるほどの恋心じゃないんだ。どんなきみだって、俺は好きだ」
甘い言葉とともに慈しむような視線が降り注ぎ、胸が早鐘を打つ。
今、大和さんはなんて……?
うれしいのに、自分の身に起きたことが信じられない。瞬きを繰り返してなんとか返す言葉を探す私に、大和さんはふっと笑いをこぼして触れるだけのキスをした。
「知らなかった? 俺の気持ち」
唇を離すと、こつんと額を合わせ、大和さんが言う。
「は、はい……だって、ずっと私だけが片想いしてるんだとばかり――」
私はそう言いかけ、しまったと思い両手で口を押さえた。ちらりと上目遣いで彼の表情を窺ったら、大和さんは額を合わせたままクスクス笑った。
「口が滑ったね」
「いえ、あの、今のは」
「うん? 事実と違う?」
意地悪な目をして、大和さんが聞いてくる。
こちらの気持ちを見透かした上で、あえて私の口から言わせようとしているのだろう。