エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

「お願いします、大和さん……。教えてください。私の知らないこと」
「うん。任せて、俺のかわいい奥さん」

 冗談めかしてそう言った彼に手を引かれ、一度も入ったことのなかった彼の寝室に足を踏み入れる。

 彼がリモコンを操作すると、天井の一部に取り付けられた間接照明から淡い光が漏れ、グレー系のダークなトーンでまとめられたインテリアを照らした。

 大きなベッドに並んで座り、そっと肩を抱かれる。見つめ合うとそれだけで胸が熱くなって、どちらからともなく、引き合うように唇を重ねた。

 大和さんのキスはいつも優しく、時に礼儀正しさすら感じるほどだけれど、ベッドの上で交わすキスはまったく違った。

 激しくはないのに、濃厚で、執拗で。ゆっくり口内に侵入してきた舌が、私の味を確かめるように蠢く。

 逃げられないように両手で顔を掴まれ、絡み合う舌を伝って甘い唾液を注がれながら、ゆっくりベッドに倒される。

 ますます逃げられない体勢になるとともに、大和さんの手が器用に私のカーディガンを脱がせた。

 いつもはそれを着ていないと肌寒いのに、脱がされてもなお熱くなる自分の体が怖くなって、キスの合間にすがるような声で「大和さん」と呼んだ。

< 91 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop