エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
ピジョン・ブラッド*情熱ーーside大和
叶未と初めて言葉を交わしたのは、社長に就任して間もない頃。本当にささいなきっかけだった。
その日の俺は仕事の合間に社長室のインテリアを自らのセンスであちこち変えていたが、少々問題が発生した。
『航紀、ライトのコンセントが届かない』
『置き場所を変えればいいでしょう』
航紀は至極どうでもよさそうに、自分のデスクで事務作業をしながら答える。俺のこだわりのインテリアなど、見ようともしない。
『いや、この棚の上でなければダメだ』
『面倒な人ですね……総務課に行って、備品の延長コードを貰ってくればいい』
そういうお使いは、秘書の仕事なのでは?
内心そう思ったが、航紀が立ち上がる様子はない。自分でやれということなのだろう。
まあいい。ついでに社長として総務課の雰囲気でも視察しよう。
エレベーターで総務課のある二階に下り、気楽な心持ちでオフィスをフラッと覗く。
デスクワークに勤しむ社員が五、六人。その中で、たまたま近くのデスクにいた女性社員に、俺はさっそく尋ねた。
『仕事中に申し訳ないけど、ちょっといいかな?』