俺と妻と傷口

｢まさに愛妻弁当だと思わね？｣
先宮の顔が強張る。

｢華恋って料理苦手だったらしいんだけど、そーとー勉強したんだって！
今ではスゲー上手いんだぜ、料理｣
｢あの！｣
｢あ？｣
｢その話、まだ続きますか？｣
｢うん。華恋のことなら、永遠に話せるぜ！｣
｢何か違う話しません？｣
｢は？なんで？華恋の話以外話す気ない！｣
｢え…。だったら私はもう……｣
そう言って、ソファーを立つ先宮。

｢華恋に、何を言ったんだよ？｣
｢は？｣
｢様子が明らかにおかしい。
やたら俺に甘えてくるんだ。普段の華恋じゃ、考えられない行動だ。
華恋って七歳差をかなり気にしてて、俺に普段甘えないんだよ。俺のことガキみたいに扱うし｣
｢だからってなんで私？｣
｢昨日トイレから出てきてから、様子がおかしい。
あの時トイレにいたの、華恋とお前だろ？｣
先宮が息を飲むのがわかった。

｢私は別に……｣
｢まぁ、いいや！とにかく次、華恋を傷つけたら容赦しないから！｣
｢え？｣
｢俺が！どんな人間かお前も知ってるだろ？｣
｢え…｣
｢話はそれだけ。さぁ、華恋の愛妻弁当食おっと！｣

｢失礼しました…｣
先宮が肩を落としたように、社長室を出ていった。

｢ふぅ…少し、スッキリしたな…｣

てか、香水臭っ！！