俺と妻と傷口

*****先宮 side*****
｢なんなのよ…｣
奏多社長は仕事中、ジャケットを脱いで仕事をしている。
そのジャケットはソファーに、掛けている。
だからいつも社長の目を盗んで、自分の香水を少しだけふきかけていたのだ。

女はだいたいそうゆう、ちょっとした変化に敏感だ。
相手が好きな男なら、尚更。
だから、わざと嫌がらせをしていたのだ。

許せなかった。
華恋が入社して、一気に現･会長、幹部や男性社員の視線や心をさらっていったから。
完全な妬み。
そんなことはわかっている。
だからこそ尚更、嫌悪感でいっぱいになるのだ。


プルルル………
秘書室の電話がなる。
｢はい。先宮です｣
『受付です。社長の奥様がいらしてます。社長に繋いで下さい』
は━━━？

｢私が対応しますので、そこで待つように伝えてください｣
『はい、了解しました』
もう！こんな時になんなのよ…！！

ロビーに下りると、華恋が受付で他の社員に囲まれていた。
｢久しぶりね！華恋～｣
｢ほんとね！みんな元気そう！｣
｢今日、どうしたの？｣
｢奏多がこれ忘れて行ったみたいだったから、届けに……受付に渡して帰るつもりだったんだけど、呼んでくれるって言うから｣
｢そっか～。また今度女子会しよっ！｣
｢うん！もちろん！｣

彼女はいつになっても、人気者だ。
また、醜い嫉妬心が膨れだした。