俺と妻と傷口
「奥様」
「あ、先宮さん」
「今、取り込み中なので私が対応します」
「そうですか。じゃあこれ。奏多が忘れて行ったみたいなので……」
書類を受け取る。

「今私達、昼食中だったんですよ」
「は?」
「二人で」
「え……」
「オムライス」
「え?」
「迷惑みたいですよ?ご飯にすりおろした人参まで入れてまで、食べさせられて……」
「どうして、それを…?」
「今話をしたからですよ。奥様」
「━━━━」
「では。まだ食事中なので、失礼します」

今にも泣きそうな、華恋を置いてその場を去る。


コンコン━━━
ノックをして、社長室へ。
「社長。これが受付に届いてましたよ」
「あ?誰が届けたんだ?」
「奥様みたいですよ?受付に届いてました」
「は…?」
そう言うと、奏多社長は社長室を駆け出した。

「え?ちょっ……奏多社長!?」
慌てて追いかけた。

━━━━━━━!

ロビーに着くと、奏多社長は華恋を抱き締めていた。
「なんで、連絡しねぇんだよ!?」
「離して!!奏多」
「やだよ!華恋泣きそうじゃねぇか!
何があったんだよ!?」

「社長がいけないんですよ!」
「あ?」
「先宮さんと、お昼一緒したりした上にあんな酷いこと………」
周りにいた、華恋の元同僚が奏多社長に訴えていた。

「は?なんだよ、それ……」
「奏多…迷惑なんでしょ?オムライス……」
「は━━━?」
「私、バカみたい。奏多の為にいつも必死で料理勉強して………」
「マジ…訳わかんねぇんだけど…?」
奏多社長は、心底わからないと言う風な顔をしている。

ヤバい━━━━
「え…?だって、先宮さんが………」
一人の社員が社長に言った。
「だって!先宮さん、言いましたよね!?」
一斉にみんなの視線がこちらへ、向いた。
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