俺と妻と傷口
「どうゆうことだよ……先宮」
「そ、それは……」
「迷惑ってなんだ…?」

奏多社長は、基本的に会社ではとてもクールで冷たい人だ。
ほんとに華恋しか興味ないのだろう。
高校卒業して、入社した時から華恋の前以外では、ほとんど笑わない。
仕事に厳しく、失敗も許さない。
でも華恋に対してだけは、とても穏やかで優しく微笑み、全く違うのだ。

その奏多社長なのだが、今は普段のそれよりも冷たくまさに“悪魔”のようだった。

「言ったよな!次は容赦しねぇって!
言え!華恋に何っつたんだよ!?」

少しずつ、奏多社長がこちらに向かってくる。
黒い闇が向かってきてるようで、物凄い圧迫感があった。
この会社のロビーは広いはずなのに……
私は足がガクガク震え、腰を抜かした。

そして、私の胸ぐらを掴み持ち上げた。
「う……かな…しゃちょ、う……」

奏多社長は元・暴走族の総長だ。
それはこの会社でも有名な話。
そして奏多社長の所属していた暴走族は、残酷で有名で裏切ったり、仲間を傷つけた人間は、老若男女関係なく、容赦ないらしい。

「ちょっ……奏多!やめて!お願い!!」
華恋が必死に止めようとするが、止まらない。
「離せ……絶対に許せねぇ……華恋を傷つける奴は絶対に……」
完全に我を忘れている。

「お願い!!奏多!私を見て!」
「え…華恋…?」
「私は大丈夫だよ?ね?先宮さんを離して?」

そこでやっと、手を離された。

*****先宮 side・終*****
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