俺と妻と傷口
華恋の言葉に、みんな口をつぐんだ。
「みんな……怖ぇよ…。
特に奏多!お前…ヤバいよ……」
力弥が本気でびびっている。
それもそのはず、このメンバーは暴走族時代、最強と言われた幹部連中だから。
もちろんその中に俺や力弥も入っている。

「え?え?皆さん!楽しく飲みましょう?奏多もこっちおいで?」
「だな!翼!もういいよな?我慢の限界だ!」
「フフ…OK!」
俺はみんながいるソファー席に行き、華恋の横にぴったりくっついて座った。

「じゃあ、改めて!乾杯!」

楽しくみんなで飲んでいると━━━━
「あ、奏多。私お酒もらってくるね!」
「うん。わりぃな!」
華恋が力弥のいる、カウンターに向かう。

すると……
「君、可愛いね~」
「え…?」
「ヤバ…なんかいい匂いするし…!」
「ほんとだぁ。柔らかそう!」
三人の男達に声をかけられていた。
力弥は他の客の対応をしていて、気づかない。

「おい!奏多!」
と翼。
「教えなきゃな!誰の女か」
と政樹。

「あぁ。いい度胸してる」
「行こうぜ!」
他の奴等と、華恋の方に向かった。

「離して下さい!」
「いいじゃん!俺等と飲もうぜ!」
「やだ…連れはいるので、結構です!」
「やだ…って声まで可愛い~」
「ほら、行こ!」
グッと華恋の手を掴む男。

「ちょっ…ほんとにやだ…」
「痛ぇーー」
「手を離せ……」
俺は華恋の手を掴んでいる男の手を、握り潰すように掴んだ。

「奏多…!」
「早く……離せ…」
「わかったから、お前も離せよ!折れる……」
その男が華恋の手を離したのを確認して、離した。
「奏多!」
俺の方に駆け寄ってくる、華恋。
俺達の後ろに隠した。

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