俺と妻と傷口
「は?なんだよ!?そのキモい言葉。
俺、女好きだけど?」
「そうゆう意味じゃなくて、恋愛って意味じゃなくて、家族みたいな愛情のことだよ?
力弥くんは、奏多が大切なんだなってことだよ!」

「そりゃまぁ、幼なじみだし!兄弟みたいに育ったし」
「そっか。きっと力弥くんも温かい心持ってるんだね!力弥くんの彼女さんも幸せだね!」

何を言ってるんだ?
コイツ。
力弥はこんな風に言われたのは、初めてだった。

力弥は人を愛するとゆう意味をわかっていない。
本気で愛したことがないから。
だから、付き合う女もとっかえひっかえだし、都合よく扱ってきた。
縛られたくないので、自由にやりたいように生きている。
力弥も奏多同様、大きな会社社長の息子で何不自由なく過ごしてきた。

そんな力弥に、華恋は心が温かい人だと言う。

「意味、わかんねぇ…」
「そのままの意味だよ?だって奏多が傷つけられた事で、私に怒りをぶつけたじゃない?
ほんとに冷たい人は、そんな感情ないよ」
「………」
「力弥くんは、優しくて温かい人だよ?」

力弥の心に、小さな温かい火が灯ったのだ。




「━━━━弥くん?力弥くん!?」
「あ、ごめん…」
「どうしたの?」
少し首をかしげて、 見上げる華恋。

力弥は無意識に、その華恋の柔らかな頬に触れた。

「え…?力、弥くん?」
「え?あ、いや、これは……。
ゴミ!なんかほっぺについてた!」
「ほんと?ありがと。取れた?」
「あ、あぁ」
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