俺と妻と傷口
力弥は華恋に触れた手を見つめる。

今、俺は何をしようとしていたのだろう。
あのまま…………

キスしたかった……………?

いやいや、あり得ない。
今まで自分からキスしたいと思ったことない。
今まで付き合った女達も、来るもの拒まず去るもの追わずで“キスして”と言うからして“抱いて”と言うから抱いた。
自分からほしいと思ったことがない。

力弥は頭を振った。
「力弥くん?大丈夫?」
こんな感情初めてだった。
今、目の前の華恋が…………

欲しい━━━━━━━

「ねぇ」
「ん?」
「なんで俺なの?」
「え?」
「俺と付き合いたいってやつ!」
「もう!その話は内緒なの!奏多にもしつこく聞かれる」
「教えてよ!
教える気ないなら、言わなきゃよかったじゃん!
そんなこと言われて、俺や奏多が理由聞くに決まってるでしょ?」
「そうだけど……。そこまで突っ込まれると思わなくて…」
「教えて?」

力弥は華恋に、目を合わして覗き込んだ。
「近いよ……力弥く…」
「教えてよ。このままじゃ、キスするよ……」
「え…?」
正直、力弥は限界だった。
華恋の綺麗な顔や、少し潤んだ瞳。
可愛くてしかたがない。
「華恋ちゃん…可愛いね……」

「…っつ。
り、力弥くんが奏多に似てるからだよ!」
「え?」
「きっと力弥くんだったら、奏多みたいに大切にしてくれると思ったから」
「そうゆうこと。
やっぱ奏多か……」
「え?」
「ううん」
「??」

力弥は少しずつ……初めての気持ちに戸惑い始めていた。

*****華恋・力弥 side 終*****
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