俺と妻と傷口
コイツは城野 洋と言って、会社課長だ。
まだ35歳ながら、その能力の高さからスピード出世した。
そしてこれは噂だが、華恋に惚れていたと聞いたことがある。

だからなのか、妙につっかかってくるのだ。

「社長」
「何?」
「明日のパーティー華恋ちゃん…いや、奥様は来られるんですか?」
城野はドアの方を向いたまま、話しかけてきた。

「うん、親父…いや、会長が連れて行けってうるさいから」
「そうですか」
「なんで?」
「いえ、久しぶりに会えるなぁと思って…」

は?やっぱコイツ━━━━
「お前さぁ………」
チン━━━━
「あ、着きましたね。では失礼しました」

丁度よくロビーに着き、城野が出ていってしまった。

なんなんだ………


「おはようございます!奏多様」
「おはよ」
コイツは俺の運転手の、加我。
ドアを開けてくれ、乗り込んだ。
「あのさ」
「はい、なんでしょう?」
「明日のパーティー、華恋もどうしても連れてかなきゃいけないの?」
「ですね。会長もかなり念押しされてましたよね?」
「だよな…」

「ご心配されなくとも、華恋様は奏多様の奥様でしょ?自信持たれてはいかがですか?」

「………」
自信?持てる訳ねぇじゃん……

華恋は会社内で、かなり人気だった。
俺が高校卒業して入社した時、既に付き合っていたからよかったが、そうでなければ他の奴に取られてておかしくない位だ。
< 5 / 54 >

この作品をシェア

pagetop